「わっ!?」
「何落ち込んでんの? ヤキモチ?」
後ろから抱き付いたあたしはサヤの首に腕を回し、くすりと笑う。
するとサヤは僅かに振り返り、子供が拗ねるように口を尖らせてあたしと視線を交えた。
「……凪は」
「……」
「俺のモノなのにぃぃぃい!」
「ぎゃーーーっ!!」
形勢逆転とでも言うのか、一瞬の隙に、からかっていたはずのあたしがサヤに抱き付かれる。
「ちょ、分かった! 分かったから!」
「どこの馬の骨かも分からない奴に、凪はあげません!」
ガッと肩を掴まれ、ふたりの間に隙間ができる。
真剣な表情をしているサヤには悪いけど、馬の骨ってどういう意味だろう。
「ていうか別に、嫁に行くわけじゃないんだから……」
「ヤダー! 凪のいちばんは俺じゃなきゃダメ! そうじゃなきゃ交際なんて認めません!」
親バカにもほどがあるけど、顔がニヤけるあたしもはたから見れば相当ファザコンだと思う。
「馬鹿じゃん。当たり前なこと言わないで」
「……やばい泣く」
「はい嘘泣きー」
「ヒドイ!」
けらけらと笑いながら、視界の端に気まずそうな緑夏ちゃんが映る。
「……ね。緑夏ちゃんも嘘泣きだと思うでしょ?」
「え!? や、私は……」
「凪ひどい! 緑夏ちゃんは分かってくれるでしょ!?」
「え!? いや、仲良しだと思います! ふたり共!」
「「……」」
「何それぇ~!」と笑うサヤ同様に、あたしも緑夏ちゃんの言葉に吹き出した。



