「……眠るまでいてくれる?」
やっと発した言葉は、久しぶりの甘え。けれどそれはサヤにとって嬉しいことだったらしく、緩みきった笑顔を向けてくる。
「かわい~」
馬鹿じゃないのと言いたかったけれど、やめておいた。
自分が今甘えていることなど重々承知だし、サヤがそばにいてくれるなら何を言われてもよかった。
指が絡まる手を顔の近くへ引き寄せれば、サヤの人差し指はあたしの頬をくすぐる。
視線だけで見上げると、今にも溶けそうな笑顔が向けられていた。
……奪われたくない。
そうだ。これは、彗がうちに来た時に感じたものと同じだ。
サヤが彗の手を引いていただけで嫉妬したのだから、あの時のほうがよっぽど独占欲は強かったと思うけど。
でもなぜか今の方ほうが、ドロドロしてる気がする。
「……サヤ」
「ん? なぁにっ?」
「……」
聞こうと思ったのに、その意思は糖分でしかできてないような甘い声に削がれた。
「……なんでもない」
いいや、今は。
今この瞬間、サヤから降り注ぐ優しい視線と、頬をくすぐる指の温度を感じられれば。
きっと起きたら、このドロドロした感情も消えてる。
「おやすみ、凪」
だからまた今度聞こう。
今は、瞼を閉じたあたしの頭を緩く撫でる手に、心地よさだけ感じてればいい。
あたしは今日も、サヤのおかげで眠れるのだから。



