僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……緑夏ちゃん、ありがとう。俺は少し、凪と話すから」

「あ、はい! ……凪ちゃん、お大事にね」


あたしは僅かに顔を上げて、部屋を出て行く緑夏ちゃんに笑顔で軽く頷いてみせた。


そんなものは偽善でしかなくて、罪悪感がないわけじゃないけれど、密室になった瞬間どうでもよくなる。


「さて……お姫さんは俺とふたりで何を話したかったのかな」

「……」

「それとも、話したくないけど何かあった?」


当たってるようで、当たってない。


別に会話なんていらないし、ただふたりの空間にいたかった。


聞きたいことはあるけど、怖くて聞けない。


……ねぇ、サヤ。


外で、あたしのことを本当の娘だと言ってるはずなのに。


あたしがパパと言わずサヤと呼んだのに、どうして緑夏ちゃんは平然としていたの?


緑夏ちゃんは、サヤが誰だか知ってるの?


あたしと血の繋がりがないと、知ってるの?


2人の秘密じゃなかったの?



「……ダンマリはあんまり好ましくないけど……まあ、いっか」


――またあの感覚。


ドロドロとした、意味の分からない苛立ちのような感情。それが心の奥で回って回って、吐き出し口が見つからず、消えないままだ。


「……ん?」


布団の中から出した手でスーツを握ると、サヤは目を細めて微笑む。


「どーしたの? 手、握ってほしいの?」


そう言いながら答えも聞かずに、あたしの手に指を絡めてくる。


奪われたくない。


その言葉が脳裏を掠めた瞬間、胸に渦巻く感情が独占欲だと気付いた。