「んーっ! でもそっかぁ。あたし、好きになる人は優太と違うイメージだったな」
両腕を上げて背筋を伸ばしながら後ろのソファーへもたれると、緑夏ちゃんは「タイプってこと?」と聞いてくる。
「そ。優太はあたしの理想じゃないって、久美とも話してたし」
「そっかぁ。でも理想ってあるよね! 凪ちゃんの理想ってどんなの?」
「んー……アホっぽくて、でもやる時はちゃんとやって。優しくて、自分が信じた道を行く人かな」
テレビに映る若手俳優の髪色が目に入り、サヤと似てると思ったことで、ああやっぱりなぁと感じる。
「身近で言えば、サヤみたいな――…」
と言ったところで慌てて口を手で塞ぐ。同時に隣に座る緑夏ちゃんを見ると、目が合っただけだった。
「ん?」
「……ううん。なんでも……」
視線を逸らし、興味のないバラエティー番組を見る。
「でも結構さ、理想と好きになる人は違う時のほうが多いよね」
そんな緑夏ちゃんの言葉にぎこちない相槌しか打てないほど、頭は混乱していた。
気を付けなきゃ……違う、そんなことじゃない。
……聞こえなかったのかな? ううん、そんなはずない。誰のことか分からなかったら、それ誰?って聞いてくるに決まってる。
なんで、平然としてるの?
あたし今、パパって言わなかったんだよ?
……あたしは緑夏ちゃんの前で一度だって、“サヤ”と呼んだことはないのに。
「……緑夏ちゃん」
「ん? ……どしたの?」
あたしとサヤの秘密を……
本当の親子じゃないって、知ってるの?



