僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……緑夏ちゃんは、好きだなーってふとした瞬間に気付くの?」


お風呂上がりで髪が濡れている緑夏ちゃんの顔は普段より幼くて、これがベビーフェイスっていうのかなぁなんて、ぼんやり思った。


愛らしいとも言える顔が上気すれば、あたしの質問を肯定したようなものだ。


「う、ううん……私はね、アレ?ってなって。もしかして好きかも?って一度思っちゃったら、もう好きだーってなるかなぁ……、って意味分かんないね! 恥ずかしいねっ」


両手で頬を挟んで照れくさそうに笑う緑夏ちゃんに、あたしは少なからず羨望の眼差しを向けたと思う。


意味が分かんないなんて、とんでもない。あたしが想像していた“好き”は、まさにそんな感じだったから。


「アレ?って思ったらもう、好きで好きでしょうがないってこと?」

「あ、うん。そんな感じ! うわーすっごい好きじゃん!ってなったりする」

「ふぅん……」


そのせいか、違和感の正体。好きだと気付く瞬間が、あたしの想像とは違ったから。


あたしは優太が好きなのかーって、まるで他人事みたいに。湧き上がる照れくささも想いも、これと言って特にないけど。


そうか、好きなのかって。むず痒くはなるし、落ち着かない感じはする。


「想像とは、違った?」

「……」


いつの間にか目を伏せていたあたしの顔を覗き込むように、柔らかい笑みを見せた緑夏ちゃん。次に発せられた言葉は今までで1番、ストンと胸に落ちた。


「想像と違って当たり前だよ」

「……そっか。まあ想像通りでもつまんないかな」


口の端を上げて悪戯っ子みたいに笑うと、緑夏ちゃんは目を丸くしてから同じように笑ってくれた。