「凪ーっ! 今日カラオケ行かない?」
ホームルームが終わるとすぐにあたしの席へ駆け寄って来た久美に笑顔を向ける。
「行く行く」
「やったぁ! 最近付き合いいいねっ」
「んー、まあちょっとくらい遅くなっても平気かなーって」
「アレだね、家政婦さん来たからだね」
「緑夏ちゃんは家政婦じゃないから!」
キャッキャッと騒いでいると、優太が「なぁ」と身を乗り出してきた。
「俺らもカラオケ行くんだけど、どうせなら一緒に行かね?」
優太の周りには3人の男子が立っていた。その内のひとりが手に券らしき物を持っていることに気付く。
「それ割引券?」
「おー。フード半額券も持ってんぜ」
指差すと、券を持っていた男子が得意げに笑う。あたしは久美と顔を見合わせて、お互いの気持ちを察知した。
「「行く!」」
「じゃあ行くべ」
優太が鞄を肩にかけると、他の男子も続くように廊下へと向かって行く。
……ていうか、4対2って比率悪くない?
「凪ー? 行くよ、どしたの」
「ねぇそこのふたり! カラオケ行かない?」
「え!? ちょ、凪……っ」
久美の制止に疑問を持ちながらも、女友達ふたりに説明すると誘いに乗ってくれた。
あたしは満足して久美に行こうと声をかけると、不満げな顔をされる。
「凪ってば、分かってなぁい」
「何を?」
廊下を歩きながら、だいぶ離れた優太たちの後ろ姿を何気なく眺める。すると、久美はあたしの腕を引っ張って、ぼそぼそと耳打ちをしてきた。
「優太は凪だけ誘えればよかったんだよ! あたしはオマケで、さらに2名誘うなんて邪魔なだけっ」
そんな馬鹿な。
と言えなかったのは、振り向いた優太が、久美に話しかけた他2名を見て眉を寄せたから。
あながち嘘じゃないかもと思いながら、少し、くすぐったい気持ちになった。



