僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「本当うちの馬鹿が、気の回らないどうしようもないオッサンですみません」

「ひどい……! ちょっと緑夏ちゃんをからかっただけなのに」

「からかう社長のほうがひどいです!」

「違うよ、緊張をほぐそうと思ったんだよ!」

「言ってることがさっきと違います!!」


言い合うふたりに呆れながら、瞳を潤ませて抗議する緑夏さんをかわいいいなと思った。


仲良くやっていけそうだと、あたしは言い争いをやめないふたりに声をかける。


「はいはい! もういいでしょ。夕飯の準備するから、ふたり共大人しく座ってて」

「ごめんなさい……!」


ピシッと背筋を伸ばす緑夏さんに笑うと、今度はかわいい笑顔が返ってきた。


「凪の料理は絶品なんだよ~」

「社長いつも言ってますもんね。楽しみ……いやっ、私も手伝います!」

「あははっ! いいよ、今日はおもてなし? するから」


腕捲りしながら言うと、緑夏さんはキラキラと瞳を輝かせる。と、思ったら今度は何か言いたげにそわそわと体を揺らし始めた。


「何、どしたの緑夏さん」

「あ、あの……凪ちゃんって呼んでいいかな!?」

「え? ……はぁ、別になんでもいいですけど」

「あはははは! 温度差!!」


ひと言余計なサヤを緑夏さんは意外にも睨んで、すぐにあたしへ、はにかんだ笑顔を見せてくれる。


……かわいい人だな。お姉ちゃんみたい。


「じゃ、あたしも緑夏ちゃんって呼びます」

「うん! 今日から、よろしくお願いします!」

「はい、よろしくお願いします」


笑い合うあたしたちをサヤも嬉しそうに見ていたけれど、それは知らんぷりして、キッチンへと向かった。


声をかけたらきっとうるさいだろうし、言葉にされなくても分かってる。


『凪、いい子ー!』


そう思ってくれていると信じて疑わなかったのは、あたしとサヤだけのふたりの記憶があったから。