「痛かった! ほら、顔赤くなってるでしょ!?」
ソファーの背もたれから身を乗り出すサヤの顔を、何も言わず押し退ける。その間視線は緑夏さんに戻し、手に持つグラスを差し出した。
「どうぞ。甘いの平気ですか?」
「っえ! あ、大丈夫です! ありがとう、ございます……」
受け取ったのを確認し、あたしはサヤに視線を移す。じっとあたしを見てるサヤの額を叩くと、大袈裟に後ろへ頭を倒した。
「何するのさ凪~!」
「うっさい。飲みものも飲めないくらい緊張させて、何やってんの? 馬鹿なの?」
「え……?」
と、小さく呟いた緑夏さんに溜め息を吐く。
「全く飲んでないじゃないですか、アレ」
テーブルの上にあるマグカップを指差す。客用のマグカップは、サヤが出した状態のままになっていた。
「あ……え? あ……すすすみません! 飲める心境じゃなかったというかっ……」
「だから、もういいですよ」
遮るように言うと、緑夏さんは僅かに目を見開いてあたしを見つめる。
「挨拶とか、もういいです。そんな畏まらなくていいし、あたし固いの苦手だから。とりあえず座って、飲んでください」
促すように口の端を上げると、緑夏さんは笑い返してくるどころか瞳を潤ませた。
あれ……なんで?
突然のことに固まっていると、緑夏さんはサヤの方へ体ごと向けた。
「社長! 凪ちゃんめちゃくちゃいい子じゃないですか……!」
「でしょぉ~? なんたって俺の自慢だからね!」
「でしょーじゃないですよ! 私、本当に緊張してたんですよ!? 怒らせると怖いから気を付けてって言……」
「あ――! あー! 何!? 聞こえなかった、なぁ……ね、凪?」
恐る恐るあたしの表情を窺うサヤに、にこりと笑顔を作ってから緑夏さんに告げる。



