「は、初めまして!」
土曜日の夜、新しい同居人がやって来た。
――と言うより、遊びから帰って来たあたしの前に現れた。
「えと、元橋 緑夏です! 今日から暫くお世話になりますっ」
胸下まである焦げ茶色の髪が、二度三度とお辞儀をされたことで乱れる。
24歳……?にしては童顔で背も小さい。
全体的に小柄な印象を受けたけれど、どこか社会人らしさを漂わせている。
緩くパーマがあてられた髪とか、大きい瞳を縁取るマスカラとか、淡いピンクのリップグロスとチーク。
それに、体の前で重ねられた手の爪先が磨かれていることとか。化粧の程度をまだ知らない中学生のあたしとは違い、自分の見せ方を分かっている大人だと思った。
「……初めまして、凪です」
片手でドアを閉めながら言うと、緑夏さんは緊張で紅潮させていた頬をさらに赤くする。
「えと、社長からお話は常々……! ちゅ、中学1年生と聞いていたんですけど……大人っぽいですね!」
あたしと、ソファーに座るサヤを交互に見ながら言う緑夏さんは、なんだか怯えてる小動物みたい。
「えと、えぇと……あっ、あの! 私なんでもするので、なんでも押しつけてください! 使ってくれちゃって大丈夫です! はい!」
「ぶはははは!! っひー! もうダメッ! 緑夏ちゃんテンパリ過ぎ!」
ソファーに倒れてゲラゲラ笑うサヤに溜め息が出る。
あたしはいっそうテンパる緑夏さんの横を通り過ぎ、持っていたバッグを笑い続けるサヤの顔面に落とした。
「イッタァ!」
そのままキッチンへ向かうと、「何するの凪!」とサヤがソファーから起き上る。
あたしは冷蔵庫からココアを取り出してグラスに注ぐと、再びサヤの元へ脚を進めた。



