「じゃあ、何? 別の話? それともまた、別の人をここに住まわせたいって話?」
「う……はい……すみません……」
何でいちいち、あたしに許しを請う必要があるんだろう。
なんて、サヤの仕事仲間と言えど結局は他人だし、今のところ、思春期だからとかも考えてるんだろな。
「別にいいよ、あたしは」
垂れ下がっていた頭が、勢いよく上げられる。目を見開いて、驚いた顔をして、何をそんなに心配してたんだろう。
「ほっ、ほんとにいいの!?」
「いいよ。サヤの仕事のパートナーなんでしょ。ていうか、なんであたしに聞くかな」
「ありがとー凪っ!!」
「ぎゃあ!」
突然抱き付かれて、あたしの心臓は驚く。
あまりにも勢いがあったものだから後ろのソファーに背中をぶつけ、痛くはなかったけどサヤを引き離した。
「分かったってば!」
「いい子~!」
「もうっ、ウザい!」
さすがに中学生になると、今まで平気だったサヤからのスキンシップがこそばゆくなる。
なおかつ自分の顔が赤くなっているのが分かって、さらに体温が上がった気がした。
「はぁ~、よかったぁ!」
どれだけ緊張してたのか、サヤは大きく息を吐いて笑顔を見せる。
あたしは乱れてもない髪を撫でつけ、ドキドキとうるさい心臓を静めるのに必死だ。
「……で、今度はなんて人なのさ」
サヤは笑顔のまま、暫く一緒に住む人の名前を告げる。
「緑夏ちゃん」
――ザワッ、と。突風が吹いたような。胸騒ぎにも似たものが、あたしの奥底を駆け巡った。
「……え? ……りょ、なんて?」
「元橋 緑夏ちゃん」
「ああ……女の人、だよね?」
ざわつく胸にひとりで困惑しながら、理由は分からなくて。あたしはただ、サヤの言葉に耳を傾ける。



