僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「おいしい?」

「うん。サヤ、ココアだけは作るの上手いよね」

「ココアだ、だけは……?」


小さい頃から飲んでいたけど、サヤが作るココアはすごくおいしい。


少しぬるめのココアをゆっくり口に含むと、はっきり主張しない甘味が口の中に広がった。


温かくなる。サヤのココアを飲むと。


ほっとひと息つくと、サヤがマグカップを置いた音がする。見ると、なんでか姿勢を正していた。


「……どうしたの?」


単純にそう疑問視して、あたしもテーブルの上にマグカップを置いた。正座なんかされると、こっちまで姿勢を正さなきゃいけない気になる。


「あ、あのね……」

「乙女か」

「ひどい!」


だってモジモジするから、まるでこれから告白する女の子みたい。そう感じた刹那、あながち間違ってないのかもと思った。


「何? 何か大事な話でもあんの?」

「……すごい凪。なんで分かるの?」

「アホなの?」

「……」


そんなあからさまに肩を落とさなくても。あたしがいじめてるみたいじゃん。


今にも泣きそうなサヤに溜め息を吐いて、頭の回転を早める。


サヤが大事な話なんて、滅多にない。いつだったか、仕事のパートーナーを同居させる許しを請いに……。


「……秋元くん、また家賃払えなくなったの?」

「え!? あっくん!? ううんっ、今はもう身のほど知った賃貸マンション借りてる!」

「あ、そう……」


部下をあっくんとか呼ぶのもどうかと思うけど、身のほど知ったってひどいな。


でも、秋元くんじゃないんだ。