僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……お前はそれで、守ってるつもりなんだろうな。俺にしたら、馬鹿じゃねぇの?って感じだよ」


鼻で笑うと、彗が初めて怒りを滲ませた瞳を向けてきた。


バシッと叩き落された手に無反応でいると、彗はシワのついた胸元を荒っぽく直す。


「……って……んだ」

「……あ?」

「……馬鹿だと思うなら、祠稀なりの方法で守ってあげればいいよ。早坂先生みたいにサヤの身代わりになって、抱いてあげるの? それとも、本気で自分に振り向かせることができると思ってる?」


怒りなんて通り越し、目眩がして頭が痛い。


なんでコイツは、凪も、ひとつの道しかねぇんだ。


凪はサヤを忘れられない。だから彗は、一生そばにいる?


忘れられるかもしれねぇだろ。忘れさせてやれるかもしれねぇだろ。


彗が死んだら、凪はどうすんだよ。凪が死んだら、彗はどうすんだよ。


お互いに依存してるお前らがひとり残されたら、お前らに残るもんって何?


俺には絶望と、その果てしか思い浮かばない。


だったら、俺らだってそばにいるべきだろうが。


なんでそれが分からない。なんでその選択肢を、選ばないんだ。


「俺らの気も知らないで、なんでもかんでも決め付けてんのが気に食わねぇんだよ……!」

「だったらどうしろって言うんだ!」



――初めて、彗が声を荒げた。


いや、それよりも、苦しげに顔を歪ます彗に、俺も有須も目を奪われた。