僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「殴りたいなら殴ればいい。避けないよ、俺」


カッと怒りで顔を赤くした俺に、彗はなおも冷静に言葉を紡ぐ。まるで機械みたいに、恐ろしいほど淡々と。


「でも凪が起きるから公園とか、外でしてもらっていい?」


拳を爪が食い込むほど握り締め、粗暴な感情を無理やり押し込める。


殴りたいわけじゃない。そう自分に言い聞かせて、彗の胸倉を掴んだ。


「祠稀っ……!」

「黙ってろ有須」


彗の胸倉を掴んで立ち上がらせた俺は、有須を見ることなくそう言った。


俺も彗も睨むでもなく、ただ相手の胸中を探るように、互いに顔を合わせる。


「……祠稀は、頼ってほしかったんでしょ。凪に助けられたから、自分も少しでも役に立ちたかった。違う?」


そうだよ。

言葉の代わりに彗の視線の奥にあるものに訴える。でも彗は、ゆるく首を振った。


それはまるで、嘲笑するように鼻で笑われたようで、胸倉を掴む手に力を込める。


「なんだよ。俺には無理だって言いてぇのか」

「……じゃあ、誓える?」


誓える?

何を。

そう聞く前に、俺は彗の決意を。それが当然なんだと言うほどに、強く射るような瞳を向けられた。


「これから一生、凪のそばにいるって。今、誓えるの?」

「……」

「見たでしょ、さっき。凪のこと、支えられる? 守ってあげられる? 他の誰よりも、凪をいちばんに考えて優先できる? どれだけ撥ね退けられても、拒絶されても、嫌われても。そばにいるのをやめないでいられるの?」


無理でしょ?


そう、言われてないのに、聞こえた気がした。


ギリリと奥歯を噛んで、俺は彗を睨みつけながら呻るような低い声を出す。