僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「答えろ彗。お前は、俺と有須との関係も壊れていいって思ってんのかよ」


他の奴らなんてどうでもいいんだよ。


大雅だろうが遊志だろうが。クラスメイトの奴らとか、中学時代の友達だとか。今だけの、その場その時だけの関係だって勝手に思ってればいい。


――でも俺らは、違うだろ。

この先ずっと、続いていくだろ?

なぁ、そう思ってんのは俺と有須だけじゃねぇって、言えよ。



顔を上げた彗の表情は曇っていない。予想では、もっと困惑した表情で、苦しげな表情をしてるんだと……していてほしいと願っていた。


「そんなこと思ってない。……でも、凪が望むなら」


――あぁ。


「壊れればいいと思う」


そうかよ。

……そうだと、思ってた。


今まで頑なに凪の秘密をごまかして、隠してきたくせに。いざバレたらあっさり話す意味が、そういうことか。


「……彗、殴らせろ」

「っ祠稀!」


俺を止めるために立ちあがった有須がテーブルに手をついた音、俺が彗を殴った音、彗が床に倒れた音。


まるで同時に起こったように、静寂なリビングに響いた不協和音。俺は足元でよろりと体を起こした彗を見下ろした。


「……っ彗、大丈夫!?」

「構うんじゃねぇよ、有須」

「殴ることないじゃない!」


有須の瞳に浮かぶ涙が、色んな感情を含んでいるように見えた。


悔しいくせに、哀しいくせに、彗に駆け寄る有須は俺と同じで、どうしようもない馬鹿だ。


「彗、冷やしたほうがいいよ! 今、氷……っ」

「いらない」


そう言った彗は焦点を俺に見据えて、小さく切り出す。