「答えろ彗。お前は、俺と有須との関係も壊れていいって思ってんのかよ」
他の奴らなんてどうでもいいんだよ。
大雅だろうが遊志だろうが。クラスメイトの奴らとか、中学時代の友達だとか。今だけの、その場その時だけの関係だって勝手に思ってればいい。
――でも俺らは、違うだろ。
この先ずっと、続いていくだろ?
なぁ、そう思ってんのは俺と有須だけじゃねぇって、言えよ。
顔を上げた彗の表情は曇っていない。予想では、もっと困惑した表情で、苦しげな表情をしてるんだと……していてほしいと願っていた。
「そんなこと思ってない。……でも、凪が望むなら」
――あぁ。
「壊れればいいと思う」
そうかよ。
……そうだと、思ってた。
今まで頑なに凪の秘密をごまかして、隠してきたくせに。いざバレたらあっさり話す意味が、そういうことか。
「……彗、殴らせろ」
「っ祠稀!」
俺を止めるために立ちあがった有須がテーブルに手をついた音、俺が彗を殴った音、彗が床に倒れた音。
まるで同時に起こったように、静寂なリビングに響いた不協和音。俺は足元でよろりと体を起こした彗を見下ろした。
「……っ彗、大丈夫!?」
「構うんじゃねぇよ、有須」
「殴ることないじゃない!」
有須の瞳に浮かぶ涙が、色んな感情を含んでいるように見えた。
悔しいくせに、哀しいくせに、彗に駆け寄る有須は俺と同じで、どうしようもない馬鹿だ。
「彗、冷やしたほうがいいよ! 今、氷……っ」
「いらない」
そう言った彗は焦点を俺に見据えて、小さく切り出す。



