僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……分かってんだよ……お前が、俺や有須を嫌いだとか、邪魔だとか思ってなくても……俺や有須よりも、他の誰よりも凪を大事に思ってることくらい」


だからこそ、腹が立つ。


彗が、俺と有須を嫌ってるとは思わない。むしろ、信用とか信頼とか。そういう類の感情を持ってくれてるとさえ思う。


それなのに、それなのにだ。


嘘をついて俺と有須を欺いて、罪悪感をきっと感じてるんだろうに、彗はそれを口に出さない。


凪の傷がこれ以上深くならないように、大事に大事にして。俺や有須でさえも頼ろうとしない。


「お前も凪も、何がしてぇんだよ」


分からない。いや、なんとなく分かってる。でもそんなものは、聴きたくもないし知りたくもない。


もう、後戻りするには遅すぎることは分かっていたけれど。



「……俺はただ、凪の幸せを願ってるだけだよ」


彗の言葉が、鋭利な刃物に切りつけられたように、俺の胸を痛める。



――凪は……。


『あたしは、みんなと真逆な人生だよ。あたしが同居人を募集したのはただ、おじいちゃん所有のあのマンションを昔から狙ってただけで』


凪は、平凡に生きてきたからこそ。決して幸せなだけではなかった自分とは、違う考えを持ってるんだろう。そう、思った。


『……俺たちだけが特殊なわけじゃないけど。凪みたいな人もいるってことだよ』


――彗の言葉で、凪は誰であろうと困ってる奴がいたら手助けをして。どれだけ拒否しても、諦めが悪くて。差し伸べた手は握ってくれて、凪から手を放すことはしない。


凪のイメージは、そうだった。


全部、全部、嘘だった。


最初から全てが、俺と有須を欺くための虚構だった。