颯輔さんは優しい。
もう、父さんと母さんはいないけれど。俺たち3人家族をいつも気にかけていてくれた。
今でさえ祖父母に俺と会うように言ってくれている。15年間一度も、首を縦には振らないみたいだけど。
「……俺と両親が日本に戻ってきた時、颯輔さんは高校3年生。近くに住んでたわけじゃないから滅多に会えなかったらしいけど、俺の父さんとは連絡取ってたんだって」
俺は一度息をついて、どこから、どう話そうか悩む。
すると、予想通りとは違うけれど、有須が隙を見るように口を開いた。
「あの……颯輔さんは、いつ勘当されたの? 高校3年生だったら、凪も彗と同じ2歳だよね? ……彗のお父さんだけ勘当されたわけじゃないでしょう?」
俺はその質問を頭の中で繰り返し、いちばん簡単に真実を言えるように答えを返した。
「颯輔さんは勘当されたって言うより、自分から縁を切ったようなもんだよ。有名大学に合格して、留学の誘いもあって、将来を期待されたのに、それを凪のために全部、捨てたから」
「……それで、狂人って言われんのか? 娘のためだろ?」
分からない? 本当は分かってるでしょ?
薄々、勘づいてると思うけれど、俺はちゃんと口にして言った。
「……凪は颯輔さんと、眷属関係にないからね」
ふたりの見開いた目を、俺はどんな感情を持って見返してるのか、自分でもよく分からない。
ただよく分かってるのは。
「凪と颯輔さんは、本当の親子じゃない」
凪は、俺と同じだと言うこと。
本当の両親は、いない。
もうひとつ言ってしまえば、凪が颯輔さんの娘でないということは、俺と凪は本当のいとこなんかじゃない。
血縁上から見れば完全に、赤の他人なんだ。
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