僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「凪!」


ドンッ!っと強くドアを叩いて、ガチャガチャと取っ手を動かす。


開かない。入れない。

凪が、ひとりになってる……。


ゾクッと背筋を駆け上がる戦慄。おぞましいほど黒い、真っ黒な闇。


「凪っ!!」


ひとりにしちゃいけない。
ひとりにさせたらまずい。


後悔なんかより先に、俺は凪のそばを離れちゃいけなかったのに……!


「開けて凪っ!!」


穴という穴から冷や汗が吹き出し、体温がガクンッと一気に下がった気がした。


「おい彗、落ち着っ……」


肩を掴んだ祠稀の腕を振り払い、俺はドアを睨む。フッと短く息を吐いた次の瞬間、蹴破られたドアは勢いよく開いた。


暗い凪の部屋にはリビングの明かりが僅かに入り込み、凪の小さい背中を照らす。


そのそばに落ちている小瓶と、蓋がされてないペットボトル。床に散らばる錠剤と広がる水に、ギリッと奥歯を噛んだ。


「凪っ!」


口元を押さえる凪を抱き抱え、部屋を出る。擦れ違った祠稀と有須のことすら見ずに、俺はトイレへ向かった。



「吐いて凪!」


便器の前に凪を座らせて、大量に飲んだであろう眠剤を吐かせようとするけど、凪は緩く首を振る。


――ごめん、ごめん。


そう心の中で何度も謝りながら、抵抗する凪の体を後ろから押さえ付けた。


「吐いて! 早く!」

「……っ、やぁ……」

「……彗」

「!」


振り向くと、祠稀と有須が立っていた。無我夢中な俺の顔はきっと真っ青だろう。それでも今俺がやるべきことは、ただひとつだった。