「凪!」
ドンッ!っと強くドアを叩いて、ガチャガチャと取っ手を動かす。
開かない。入れない。
凪が、ひとりになってる……。
ゾクッと背筋を駆け上がる戦慄。おぞましいほど黒い、真っ黒な闇。
「凪っ!!」
ひとりにしちゃいけない。
ひとりにさせたらまずい。
後悔なんかより先に、俺は凪のそばを離れちゃいけなかったのに……!
「開けて凪っ!!」
穴という穴から冷や汗が吹き出し、体温がガクンッと一気に下がった気がした。
「おい彗、落ち着っ……」
肩を掴んだ祠稀の腕を振り払い、俺はドアを睨む。フッと短く息を吐いた次の瞬間、蹴破られたドアは勢いよく開いた。
暗い凪の部屋にはリビングの明かりが僅かに入り込み、凪の小さい背中を照らす。
そのそばに落ちている小瓶と、蓋がされてないペットボトル。床に散らばる錠剤と広がる水に、ギリッと奥歯を噛んだ。
「凪っ!」
口元を押さえる凪を抱き抱え、部屋を出る。擦れ違った祠稀と有須のことすら見ずに、俺はトイレへ向かった。
「吐いて凪!」
便器の前に凪を座らせて、大量に飲んだであろう眠剤を吐かせようとするけど、凪は緩く首を振る。
――ごめん、ごめん。
そう心の中で何度も謝りながら、抵抗する凪の体を後ろから押さえ付けた。
「吐いて! 早く!」
「……っ、やぁ……」
「……彗」
「!」
振り向くと、祠稀と有須が立っていた。無我夢中な俺の顔はきっと真っ青だろう。それでも今俺がやるべきことは、ただひとつだった。



