ふたりを見送って、4人無言のままリビングへ戻る。
あたしは最後尾を歩いて、ソファーには向かわず冷蔵庫へ向かった。
開けて、最初は作り置きしたココアに手を伸ばしたけれど、すぐに水の入ったペットボトルを選ぶ。
目を閉じて、深呼吸して、バタンと冷蔵庫のドアを閉めたと同時に目を開けた。
――大丈夫。乗りきれる。
今、この瞬間だけなら。
「さすがに、バレたよねぇ……」
ソファーに祠稀が座り、カーペットに彗と有須が座っている。あたしはそこには混ざらず、ダイニングテーブルの椅子に腰かけた。
あたしを見つめる4つの瞳は、困惑に揺れている。
「父親のこと愛してるなんて、気持ち悪いでしょ」
誰も、何も、喋らない。
まるで息をするのでさえ気を遣いそうな空気に、あたしは既に耐えられなかった。
諦めたと言ったほうが正しい気がするけれど、もはやどうでもいいことだ。
嘘が、無駄になってしまったんだから。
あとは崩れるのを。築いた幸せという名の囲いが崩れるのを。朽ちるのを、待つだけだ。
「……ごめん。まさか緑夏ちゃんが来るとは……。ごめん、この話、また今度でいいかな。ちょっと……疲れた」
そう、疲れた。
体中に鉛が乗っかってるみたいに喋る気力がないし、動くことさえ面倒くさい。
ゆらりと立ち上がり、何も言わない3人に、あたしも何も言わず自室に脚を向けた。
――眠りたい。
深く、深く、どこまでも堕ちるみたいに。
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