僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



ふたりを見送って、4人無言のままリビングへ戻る。


あたしは最後尾を歩いて、ソファーには向かわず冷蔵庫へ向かった。


開けて、最初は作り置きしたココアに手を伸ばしたけれど、すぐに水の入ったペットボトルを選ぶ。


目を閉じて、深呼吸して、バタンと冷蔵庫のドアを閉めたと同時に目を開けた。



――大丈夫。乗りきれる。

今、この瞬間だけなら。



「さすがに、バレたよねぇ……」


ソファーに祠稀が座り、カーペットに彗と有須が座っている。あたしはそこには混ざらず、ダイニングテーブルの椅子に腰かけた。


あたしを見つめる4つの瞳は、困惑に揺れている。




「父親のこと愛してるなんて、気持ち悪いでしょ」



誰も、何も、喋らない。


まるで息をするのでさえ気を遣いそうな空気に、あたしは既に耐えられなかった。


諦めたと言ったほうが正しい気がするけれど、もはやどうでもいいことだ。


嘘が、無駄になってしまったんだから。


あとは崩れるのを。築いた幸せという名の囲いが崩れるのを。朽ちるのを、待つだけだ。


「……ごめん。まさか緑夏ちゃんが来るとは……。ごめん、この話、また今度でいいかな。ちょっと……疲れた」


そう、疲れた。

体中に鉛が乗っかってるみたいに喋る気力がないし、動くことさえ面倒くさい。


ゆらりと立ち上がり、何も言わない3人に、あたしも何も言わず自室に脚を向けた。



――眠りたい。


深く、深く、どこまでも堕ちるみたいに。