「なーぎっ! ちょっと早いけど、誕生日プレゼントーッ!」
くるっと向きを変え、あたしが大好きなブランドの何かを渡してくる“サヤ”。
あたしはガンガンと響く頭の痛みを無視して、口の端を上げた。
「いや、早すぎるでしょ」
「えー! だって俺、直接渡したくて一生懸命選んだんだよ!」
「忘れたらしいじゃん?」
クスッと笑い、あたしは憎くて仕方ない存在に微笑みかけた。
「緑夏ちゃん、ごめんねわざわざ。そんな体で」
「ううんっ! いいの! 大丈夫だから、気にしないでっ」
これっぽちもしてねぇよ。
「あー……えっとね、この人があたしのお母さんで、緑夏ちゃん」
固まっている有須と祠稀に構わず、あたしはふたりに微笑みかける。
「で、お腹の子があたしの妹か、弟になるんだ」
そう言うと、いつの間にいたのか、彗があたしの背中に手を添えていた。
彗が微笑んで、何か会話していた気がするけど、頭の中には入ってこなかった。
ただ延々と、クソ女の幸せそうな笑顔と、時折お腹をさする仕草と、サヤの幸せそうな笑顔が。
延々と、延々と、
繰り返されていたのは分かった。
そのたびあたしは吐き気を覚えて、気が狂いそうになって、それでもふたりが帰るまで笑顔を作り続けた。
心の中で何度も何度も、ふたりの幸せなんかブチ壊れてしまえと思いながら。



