僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「凪、凪っ」

「んー? ……うわっ! 何すんの!」


ちょんっと鼻先を突かれて、泡を付けられたんだと分かる。


「かわい~」とふざけるパパにイラッとして、パパの腕に顔を押し付けてやった。


「わー! そうやって人の服で!」

「付けるほうが悪いんですー」

「このぅっ!」

「ぎゃー! バカー!」


スポンジを向けてきたパパに奇声を上げると、リビングに戻ってきた祠稀の姿が目に入った。


「あ、祠稀。やっぱセールスの人……」


パパの泡だらけの手を掴んでいたあたしは、祠稀の後ろから出てきた人に目を見開く。


「……え ? アレ!? 緑夏ちゃん!?」


パパがすぐさま反応して、祠稀は困ったように首の後ろを掻いていた。


「あー、なんか開けたらこの人いて。……奥さんっすよね?」

「うん! ビックリしたぁー……」


そう、あたしの、ママがそこにいた。


「ごめんね、いきなり来て」

「いやいや、どうしたの! 来れないって言ってたのに!」


パパは急いで手の泡を水で流し、適当に手を拭いてからキッチンを出る。


次にあたしの目に入ったものは、大好きなブランドの紙袋だった。