僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……でもそろそろ、ホントに時間でしょ?」


有須がせっせと5人分の茶碗を片付けるのを手伝っていた彗が、ふと壁にかかる時計を見上げる。


「うーん、そうなんだよねぇ。ヤダー、仕事休みたーい!」

「大人が駄々こねんな!」

「あはは! なんか、凪がしっかり者な理由分かったかも」


そう言って笑う有須に、苦笑いを返す。


分かってくれて嬉しいような、そうじゃないような気がする。


有須が食器を持って立ち上がると、パパが「手伝うよ」と続いた。


「今日は奉仕してもらってばっかりだったから、帰る前にひとつくらいね」


座っててくださいと連発していた有須を黙らせたのは、そのひと言。あたしは溜め息をついて、腕捲りをしながら立ち上がる。


「みんなは、まったりしてて」

「凪が手伝ってくれるのー!?」

「うるさい」


にこにこ、にこにこ。嬉しそうにするパパに、思わずつられてしまう。


ふたりで皿洗いなんて、何年ぶりだろう。そんなに経ってないかもしれないけど、ひどく懐かしく感じた。


ピンポーンと呼び鈴がリビングに響き、あたしの手は一旦止まる。パパがスポンジ係で、あたしは流す係。


「誰か来たね」

「どーせ勧誘じゃないの?」


パパとそんな話をしていると、祠稀が立ち上がる。


「んじゃあ、玄関先で追っ払ってやりますかねー」

「あっははは! 何それ! 祠稀くん、たくましいんですけどっ!」


けらけら笑うパパの声は本当に楽しそう。


祠稀は廊下へと消えていき、彗と有須は誰だろうね、なんてのんびりした会話をしていた。