僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……祠稀は、そんな外見して案外子供っぽいよね」

「オイ待てコラ。お前にだけは言われたくねーわ! このド天然!」

「だってハーフだもん」

「それ関係なくね!? 性格の話してんだよ!」

「ふたりともっ、颯輔さんの前! 喧嘩しちゃダメ!」


有須が止めに入ると、彗と祠稀がピタリと止まる。


でもパパは笑顔を浮かべているだけで全く気にしてない様子。実際、嬉しいんだろうけど。


「やー、いいなぁ。同居楽しそうだね! みんな俺の子供だったらいいのに~」

「……パパって子供好きだよね。囲まれて、超嬉しそう」


何気なく言った言葉なのに、パパはあたしをじっと見て、微笑む。


「嬉しいよ。凪が、楽しそうな空間にいてくれて」

「……」

「凪。今、幸せ?」


真剣な声とは違って、とろけそうな笑顔。


娘の幸せに関しては人一倍気にしていただろうパパに、あたしは持っていたマグカップを置いた。きちんと、目を見て答えるために。



「幸せだよ。サヤといた頃より」


その名前に、誰もが目を見開いた。このタイミングで、ましてや口にするつもりはなかった名前を出したのは、もちろんわざとだ。


有須や祠稀に口止めしといて、彗に心配をかけといて、あっさり名前を出すなんて。あたしもいい加減、気まぐれ過ぎる。


でも、意味を持たないわけじゃない。


あたしが名前を出したことで、緊張感を雰囲気に纏わせる。祠稀と有須はわけが分からず、サヤの名前をこれ以降出すことはしない。


そしてパパは、ずたずたに傷付きながら、娘の幸せを願う。


……あたしの過去なんて、勝手に話させはしない。