「みんなは彼氏彼女、いるの?」
……出た。
彗の視線を感じて、あたしは分からない程度に肩を竦めてみせる。
有須が「いないです」と答えると、祠稀もそれに続く。
「みんないないよ。前言わなかったっけ」
「えー。つまんなぁい」
今年32歳とはホントに思えない喋り方と会話に、あたしは疲れが押し寄せる。
「昔からこうなんだよ。人の恋愛に茶々入れたがんの」
「えー! だって高1なんて、まさに恋愛真っ只中!って感じなのにっ」
ブーッと娘の前で頬を膨らませる父親なんて、この世にどれくらいいるのか。
「凪は昔から、恋愛面だけは達者でね? 俺はもう、悪い男に引っかからないかとヒヤヒヤしてたんだよ」
「パパ、口縫ってあげようか?」
にこっと笑顔を作ると、「かわいい」と締まりのない顔を殴りたくなる。
有須も祠稀も、サヤのことを頭に浮かべたのか、堅い笑顔しか出せていない。
「……颯輔さんは親バカ過ぎるんだよ」
「えー、だって自分の子供はかわいいじゃん! 彗だってかわいい!」
「俺、男だよ?」
「やっ、やだ! どうしよう、かわいすぎる……!」
大袈裟に顔を覆うパパに、彗は呆れながらも口の端を上げる。
「……なんかさぁ、颯輔さんってバカっぽいな」
「ちょ、祠稀! それは言っちゃダメだと思う!」
「ははっ! 有須、それ自分も思ってるって言ってるようなもんだからね」
「え! あ! ち、違います! お父さんぽくないなぁって思っただけで……!」
「あーあー。有須、後でヤキ入れられんぞ」
祠稀のからかいが始まって、単純な有須は顔を青くさせる。意地悪い祠稀は止まらず、そこへ彗がぽつりと呟いた。



