――ピンポーン
「「来た!」」
チャイムがリビングに響き、有須と祠稀の声がハモると彗が立ち上がった。
「凪お前っ、彗に行かせんのかよ!」
ソファーに座ってクッションを抱くあたしに祠稀がそう言ってきたけど、自分の体は動かさなかった。
「彗が出たら絶対喜ぶよ。てか、叫ぶと思う」
「さ、叫ぶ?」
有須の不思議そうな顔とは裏腹に、彗は軽い足取りで玄関に向かう。あたしはその背中を見送ってから、キッチンへ脚を運んだ。
「ぎゃー! 彗に迎えられたーっ!!」
玄関からリビングまで突き抜けた声。驚く有須と祠稀に「ほらね」と言って、白いマグカップと4人分のマグカップを食器棚から取り出した。
5人分の飲み物を淹れる音と、微かに聞こえる足音と話声。それは確実に、リビングへと現れた。
「わっ! ほんとに全員いる~!」
「……だから、いるって言ったじゃん」
姿を現したパパに、有須は立ち上がり、祠稀はポカンと口を開けた。
「わっか! 何、若くね!?」
「ちょ、祠稀っ! こ、こんにちは! 初めまして!」
「こんにちは~。えっと、いの、うえ……有須ちゃん!」
パパはリビングに脚を進めながら、今度は祠稀のほうを見ている。その証拠に祠稀が立ち上がり、軽く頭を下げた。
「日向祠稀です、こんちは」
「……美少年だねぇ。祠稀くん、モデルか何か?」
面食らった祠稀に、彗が珍しく声を出して笑う。よっぽどパパに会えたのが嬉しいみたい。
5人分の飲み物を淹れ終えて、トレーに乗せて4人の元へ向かう。視線を感じながらテーブルにマグカップを並べ、目を伏せたまま立ち上がった。
すっと視線を上に向ければ、混じる視線。
「凪っ!」
眩しいほどの笑顔に、あたしは笑い返した。
「久しぶり、パパ」



