「あ、凪。おかえり! 温まった?」
リビングへ行くと、有須、祠稀、彗がそろっていた。
「うん。ブレザー1枚とか、冬ナメてたわ」
「当ったり前だろ、バカじゃねーの。バーカ」
……最近、祠稀のあたしへの言葉使いが悪いのは、気のせいかしらね。心当たりがないわけじゃないけどさ。
「あがり」
「って、はぁ!? また彗が1番かよ!」
「凪、ココア飲む?」
「シカトか! 勝者の余裕か!」
「祠稀……そういうの負け犬の遠吠えって言うんだよ」
UNOをしてたらしい3人は、有須の一言で固まる。祠稀の頭に怒りマークが見えたのは知らないフリして、彗は一応「まぁまぁ」とか役に立たない仲裁に入る。
「髪乾かしてくるねー」
「有須テメェ! 今なんつった!?」
「きゃー! きゃー! ごめんなさい!」
「まぁまぁ」
「お前さっきからそれしか言ってねぇぞ!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ3人の声を背に、自室のドアを閉めた。ブレザーが壁にかけられていることに気付き、ベッドの横には鞄が置かれている。
……几帳面。彗ってA型だっけ?
自分は大雑把だなと思いながら、ブレザーのポケットに入れていた携帯を取り出し、そのままべッドに腰かけた。
無造作に床に置かれたドライヤーを拾い上げ、温風を髪に当てながら携帯を開く。
3時42分。そろそろ、パパが来る頃かな。
あたしのパパは、実は社長だ。若い頃に自分の会社を立ち上げて、色々苦難もあったけれど、今はすっかり安定している。
なんでも屋の頭とかふざけたことを言っていたけれど、実際は商戦が激しいIT事業を大成させたひとりだ。
過ぎていく時刻をぼんやりと見ていると、携帯画面が着信を知らせる。
相手はもちろん、パパだった。



