逃げ場所なんて、あたしにはない。
必要もないの。
どこに逃げたって、傷付かない場所なんてこの世にはないのだから。
サヤを想うたび、抱かれるたび、あたしはめちゃくちゃに傷付くんだから。
その傷が膿んで、治る前にまた傷付けて、膿んで、膿んで、その内サヤを想う気持ちまで膿んでしまえばいいと思うのに。
再生を繰り返すそれは、消えない傷痕を残すだけで、サヤへの想いをさらに深く濃くしてしまう。
あたしは何度、眠れない夜を過ごしたのか。
目を閉じて、眠りについて、そのまま目が覚めなければいいと、何度思っただろう。
あたしは眠りたくない。
サヤの笑顔を頭の隅に浮かべて、温もりを肌に感じて、愛しさと憎しみを心の奥に抱えながら、1日を過ごす。
それら全てを抱えて、朝日が昇るたび、また今日も凪を演じなければいけないと思うと、夜が明けなければいいのにと思う。
眠りたくない。
明日も、明後日も、この先ずっと同じことの繰り返しならば。
それが叶わないのならば、永久に眠っていたい。
それでも願いは届かず、
あたしの朝はいつも、絶望から始まる。



