「……それ、いつの話」
「いつって、先月末? 祠稀がマンションに帰る前あたりやな。……なしてそんなこと聞くん」
「俺も言われた。マンションに帰った日」
眉間に皺を寄せて言うと、遊志が「へぁ?」と間抜けな声を出す。
「どこにも行かないでって、泣きながら言われた」
埋まっていたように思えるジクソーパズルが、よくよく見たら欠けていた。
ひとつなのか、ふたつなのか。あと少しで完成するのに、ピースが見当たらない。そんな気分。
「……へぇ? それはそれは。……ふぅん、なるほどね」
俺らなんかお構いなしって感じで、ひとり納得したように頷く大雅。怪訝に見ると、大雅はにこりと笑顔を向けてきた。
「なんだよ」
「はは。やだなぁ、分かってるくせに」
本当にムカつく奴だなと思った瞬間、屋上のドアが開く。
さっと煙草を隠す大雅から前方を確認すると、教師ではなく有須が立っていた。
「あっれぇ、有須ちゃんやないの~!」
「あ、遊志先輩……大雅先輩も。こんにちは」
頭を下げる有須を律義だなと思いながら、俺は煙草に火も点けずに指で弄ぶ。
「何、どーした?」
「あ、お弁当! ここにいるかと思って、持ってきたの」
「ああ、昼休みか……メールすれば教室戻ったのに」
そう何気なく言ってから、少し後悔する。
「そうだね」と、困ったように笑う有須の手には、俺のだけではなく自分の弁当箱も持っていたから。



