「凪!」
「……、チカじゃん! なんでー!?」
眠そうな顔をしていた凪は、駆け寄ってきたチカを確認するとパッと笑顔を見せる。
俺はそれを横目で見ながら、チカが飲みほした珈琲カップを持ってキッチンへと向かった。
「枢稀がスパルタなんだよっ」
「あは! それで逃げてきたんだ?」
「そうだよ。僕もう本当に疲れたんだ」
「じゃあ泊まってけば? あたしのベッドで寝ればいいよ」
ズルッと落ちそうになった珈琲カップを慌てて持ち直す。落とさなくてよかったと思うより先に、凪を見てしまった。
にこにこと笑う凪に、チカたち3人はポカンとしている。
「子供扱いしないでくれる!?」
「え? してないけど?」
「……凪、勘違いされてるよ」
そう言った俺を不思議そうに見て、凪は「ああ!」と納得したように手を叩く。
「違う違う! どうせチカ、祠稀と夜更かしするでしょ? ウチ客用の布団ないからさ、寝る時はあたしのベッド使いなよってこと」
「そしたらお前はどこで寝んだよ」
チカがほっとしたような表情を見せると、祠稀はすぐさま分かり切ったことを問う。
凪はもちろん、当然という顔で俺のことを指差した。
「彗の部屋に決まってるじゃん」
俺は特に何も言わずに、凪のマグカップを食器棚から取り出す。
祠稀のイラッとした顔と、有須の複雑そうな表情は、すぐに頭の中から消した。



