「……それでね、暫くはあの家に住むけど。いつかは、引っ越そうと思うの」

「ああ、趣味ワリィもんな、あの家。外見はマシだけど」

「……ふふ。そう……ね」


おばさんのつまずいた言葉に目を見張る。


どうして、泣いてるんだろう……。


旦那さんが逮捕されたのだから、きっとあたしたちが考えるよりも、いろんな感情がおばさんの胸を埋め尽くしてるんだ。そう、思ったけれど。


おばさんが発した言葉は、母親らしいものだった。


「一緒に、住まない?」


今さらかもしれないけど、もう一度、やり直したいと。あの家で、家族の再スタートをできないかと。おばさんは言った。


祠稀は動揺を隠さず、あたしたちは驚いていた。


「お母さんと、枢稀と、祠稀と……それから、チカも一緒に。……嫌なら……っ」

「一緒に住もう、祠稀」


おばさんの言葉を遮るように肩へ手を置いて、枢稀さんは祠稀を見つめる。真剣な表情で、家族の再スタートを願ってる。



――最初に思ったことは、4人で暮らせなくなるのは嫌だということ。


でもそれはきっと彗も凪も同じで、すぐに家族と暮らしたほうがいいと思ったはずだ。


「そうしなよ。一緒に暮らしたほうがいいに決まってる」


うん。少し、寂しいけど。


「……て、いうか、この状況でマンションに戻ってきたら、俺らは怒る」


うん、そうだね。


「あたしたちとは学校で会えるよ。クラスも一緒だし!」


だから、ね。


「……僕、祠稀が泣いたの初めて見た」


泣くことないよ、祠稀。