◆Side:祠稀
凪たちが出ていった代わりに病室にいるのは、あまりにも懐かしいふたりだった。
「しっかしお前、化けたなぁ。ヒカリと見間違うぞ、それ」
「リュウ、ここ、病院」
「ああ、やべ。つい癖で」
デニムのポケットから皺くちゃになった赤マルとライターを、リュウはポケットに押し込んだ。ユナは呆れたように溜め息をつき、俺は未だに呆然としてる。
……違う。呆然としたのは本当だけど、そんなものはとっくに過ぎた。俺は今、泣きそうなんだ。
また逢えて嬉しいけど、できれば逢いたくはなかった。
会わせる顔がないのも本当だし、土下座するくらい、謝らなければいけないのも本当で。
俺が2年間してきたことが、走馬灯のように頭を駆け巡って。どうすればいいか分からなかった。
「……ほんとお前は、毎回ヒヤヒヤさせるよな」
リュウは隣のベッドに腰かけ、ユナはいつの間にか俺の足元に座っている。まるで、威光のビルにいるみたいな錯覚をする。2年前に戻った気さえした。
「すーぐ突っ走るし、後先考えず、向こう見ず、無鉄砲。他になんかあるか?」
「……んー。リュウとたいして変わんないと思う」
「テメェ。怒るぞ」
「……祠稀。喋らないと、リュウが怒るよ」
するりと、ユナが昔のように腕を脚に巻き付けてくる。目の前に座るリュウを見ると、眉を吊り上げてふざけている。
……ああ、ダメだ。
マジで泣きそう……。
なんでここにいるんだ。どうして、俺に会いに来たんだよ。



