「……なん、で……」
椅子から立ち上がると、チカもフードを被り直し、先に歩き出す。
凪は戸惑って俺を見たけど、微笑むと分かったみたいで、そそくさと病室を後にした。
病室前の廊下に立つ、ふたりの男女に一礼をしてから。
「よぉ、祠稀」
「……久しぶり」
俺は座っていた椅子を邪魔にならない位置に置き直してから、祠稀を見遣った。
どういうことだと言いたげな祠稀の瞳には涙が浮かんでいて、俺はわざと肩を竦めさせ、首を傾げる。
「リュウさんと、ユナさんに聞くといいんじゃない?」
「……」
「俺らは病室の外にいるから、ゆっくり話すといいよ」
複雑な表情の祠稀にそれだけ言って、俺はふたりに軽く頭を下げてから病室を出る。
「ワリィな彗、サンキュ」
ドアを閉める間際にリュウさんが苦笑いして、俺は何も言わずに微笑んでから、ドアを閉めた。
すぐに凪から詰め寄られて俺もチカも困ったけれど、病室の中はきっと、2年の空白を埋めてると思う。
――祠稀。
もう、背負ってるもの全部、置いていいんだよ。
ヒカリさんは今でも、祠稀を照らしてるから。
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