僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……なん、で……」


椅子から立ち上がると、チカもフードを被り直し、先に歩き出す。


凪は戸惑って俺を見たけど、微笑むと分かったみたいで、そそくさと病室を後にした。


病室前の廊下に立つ、ふたりの男女に一礼をしてから。


「よぉ、祠稀」

「……久しぶり」


俺は座っていた椅子を邪魔にならない位置に置き直してから、祠稀を見遣った。


どういうことだと言いたげな祠稀の瞳には涙が浮かんでいて、俺はわざと肩を竦めさせ、首を傾げる。


「リュウさんと、ユナさんに聞くといいんじゃない?」

「……」

「俺らは病室の外にいるから、ゆっくり話すといいよ」


複雑な表情の祠稀にそれだけ言って、俺はふたりに軽く頭を下げてから病室を出る。


「ワリィな彗、サンキュ」


ドアを閉める間際にリュウさんが苦笑いして、俺は何も言わずに微笑んでから、ドアを閉めた。


すぐに凪から詰め寄られて俺もチカも困ったけれど、病室の中はきっと、2年の空白を埋めてると思う。



――祠稀。


もう、背負ってるもの全部、置いていいんだよ。


ヒカリさんは今でも、祠稀を照らしてるから。