僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……GPS付いてるから、すぐ分かるよ。……もう1回聞くけど、本当にいいの?」


祠稀は驚いていたみたいだけど、問うと表情は変わって、微笑んだ。嬉しそうでも、幸せそうでもなかったけど。


ただ、自分が今からすることに覚悟を決めて、決めたからこそ、悲しそうにしか笑えないのかな。


「……いいんだよ。もう、決めた」


祠稀は首を前に垂らし、額を手で覆った。どんな表情をすればいいのか、祠稀自身も分からないんだろう。


俺だって、父親を警察に突き出すことに、ざまぁみろと笑えばいい、ごめんなさいと泣けばいい。そのどちらも言えない。


だけど、なんの感情もなしに見送ることは不可能だろうとは感じていた。


チカに視線を移すと、瞼が腫れてるチカは気付き、微笑む。その姿があまりにも悲しくて心苦しくなったけど、きっとそう思うことは失礼だ。


俺はもう一度、項垂れる祠稀を見つめ、短く息を吐いた。


「……いいって、聞こえました?」

「……彗?」


黙っていた凪が、不思議そうに俺を呼ぶ。祠稀を見ながら言う言葉としては、おかしかったから仕方ない。


祠稀も、誰に言ってるんだと思ったんだろう。顔を上げて俺を見たけれど、すぐに視界に映った現実に、目を見開く。