◆Side:彗
「……呼んで、なんて。放り投げてるようにしか聞こえないよ」
拾い上げた写真を祠稀に差し出すと、祠稀は苦笑いをして受け取る。
「なんだよ彗、説教か?」
「……違うよ。呼ぶなら、自分で呼ばなきゃ意味ないって言ってるんだ」
祠稀は俺の目を見ずに、手に持たれた何枚もの写真の端をそろえると、ベッドに置いてあった封筒に仕舞い込んだ。
そのままベッドに腰かける祠稀は、迷ってるようには見えない。
それでも、確かめなければいけなかった。祠稀自身が警察に電話をしてもしなくても、本当はどっちでもいいけど。
迷いはないのか、覚悟はできてるのか。言葉で証明してほしかった。
「……じゃあ、携帯貸せよ。親父、母さんの痣消えるまで逃げるつもりだろうけど。先に通報しても、問題ねぇだろ」
「場所なら分かってる」
近くに置いてあったパイプ椅子を引き寄せながら、もうひとつ告げた。
「俺の携帯、祠稀のお母さんが持ってるから。携帯は別の人に借りて」
「……は?」
椅子に座ると同時に、切れ長の目を丸くさせる祠稀と目が合う。
我ながら、なんて用意周到なんだろうと思ったけど。
「……きっと凪はキレて、おじさんのこと追い詰めてると思ったから、念のためにね。昨日病院に着いてすぐ、おばさんの病室に行ったんだ。とりあえず、隠し持っててくださいって」
まさかホントに連れて逃げるとは思ってなかったけど。昨日俺だけ落ち着いてたのは、そのせいもある。



