「俺が助けてやるって……言っただろ!」
……どうして、みんな平等に幸せになれないんだろう。
どうして、悲しいことが、つらいことが世の中にはあるんだろう。
簡単に受け入れられない、耐えがたい苦しみを、与えるんだろう。
それでも、乗り越えなきゃならないのは分かっていても。人はいつだって不器用で、うまくいかない。
自分が選んだ道でも、正しかったのかなんて、選んだ後じゃなきゃ分からない。後悔しても時間は戻らないし、過去は変えられない。
それでも。
それでも、生きていくなら。
止まらない時間を、これから過ぎる時間を、どう生きるのか考えなきゃいけないんだろう。
どれだけ苦しくても、つらくても、過酷な選択を迫られても。
彷徨いながら、泣きながら。生きていく覚悟を、チカはしたんだ。
「……連れてかれるふたりを見ながら、ごめんって思ったけど、後悔はしてない。……ちょっと、してるけど。でもやっぱり、僕はこれでよかったと思う。……祠稀が決めることだから、僕はもう何も言わない。それは、好きに使っていいよ」
俯いたまま、そう言うチカの言葉は、祠稀にはどう伝わったんだろう。
親は、親だ。いくら嫌いでも、憎んでも、それは紛れもない事実で、変えられない。
チカの言うとおり、方法なんていくらでもあるかもしれないけど。自ら通報することは、虐待されたことよりもつらく、苦しいものに思えた。



