「ねえ……祠稀。いくら虐待されてても、親は、親でしかないよ。……大嫌いで、憎くて、殺したくて。それでも、祠稀が命を持って生まれたのは、今ここにいられるのは、お父さんがいたおかげだよ」
チカが震える声で、祠稀に訴えかける。
あたしは涙が溢れて、嗚咽が出ないように歯を食い縛った。
「それでも、警察に言える? それを分かってても、親を売って、これから生きてく覚悟がある? しんどいよ、想像するよりずっと。あんなに大嫌いだったのに、憎んでたのにって思うよ。他に方法があったんじゃないかって……、もっと、他に……っ」
「……チカ?」
両手でフードの縁を強く握って顔を隠すチカに、あたしが違和感を感じたように、祠稀も写真からチカに視線を移す。
口元しか見えないチカは、唇を噛んで、次から次へと涙を流していた。
「お前、まさか……」
「……チカ……」
だから、あんなに泣き腫らした目をしてたの?
……なんで。どうして。
おじさんに、警察に突き出してやると言ったくせに。そう思って泣いてるあたしは、矛盾してる。
でも、だって。
「お前はまだ、やり直せただろ……っ」
まだ、14歳なのに。



