「……なん、で……お前がこんなもん……」
「……祠稀には言ってなかったけど、僕と祠稀のお母さん、ほぼ毎日のように会ってたんだ。……僕が、義父に受けた傷を治しに病院来た時に偶然会ってから、話し相手になってた。僕が祠稀と知り合いなのも知ってる。……隠しててごめん」
祠稀は手に溢れる写真を一心に見つめ、戸惑っている。あたしはその写真を一瞬見ただけで目を逸らしてしまった。
涙が浮かんだのは、その写真とお母さんやチカ、枢稀さんの証言があれば、おじさんを逮捕できると思ったから。
そんなものを突然手に入れた祠稀の胸中を、考えてしまったから。
それから――…。
「僕は午前中に来てて。祠稀のお父さんはいつも夕方だった。その写真は、僕が次の日に撮ったもの。……言わなくても、分かるでしょ? それを写真に残した……お母さんの気持ち」
――戦っていたんだ。祠稀の、お母さんも。
言い成りになっても、直接祠稀を助けることはできなくても。
とても、とても、遠回りをして。
祠稀を、枢稀さんを、助けるために。
まだ実行はできなくても、いつかきっと。きっと、息子たちを助けてあげようと。その役に、僅かでも役に立てればと。
手術をしたいとも言わず、ただおじさんに受けた暴力の痕を、写真に残して。



