僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「っ! ちょっ、祠稀! ダメだって!」


ベッドから降りようとした祠稀の顔が、怒りに溢れてるのに気付いて駆け寄るも、腕に触れたあたしの手は、乱暴に拒否される。


「ごめん! ほんとに待って! 彗が何か考えて……っ」

「待ってられっか! アイツは、自分のためならなんだってやるんだよ! ……っやっぱ許してなんかやらねぇ!!」

「祠稀っ!」


どれだけ拒絶されても、祠稀の体を抑え込もうとするあたしは、ひどく無力だ。


けっきょく何も、何かしても、いつもうまくいかない――…。


――パシッ!

と、気の抜けた音に、あたしも祠稀も止まる。見ると、チカが茶色い封筒を祠稀の頭に叩きつけていた。


「……じゃあ、売れる?」

「……チカ? 何、どうした」

「許せないなら、方法なんていくらでもあるんだ」


チカが封筒を布団の上に落とし、1歩後ろに下がった。あたしは祠稀を抑えていた腕を離して、祠稀は封筒に手を伸ばす。


「……何? コレ、見ろって?」


チカは何も言わずに、浮かんだ涙を拭ったみたいだった。そんなチカを見てから、祠稀は封筒に手を入れる。


祠稀が中身を出したと同時にチカが呟いた言葉は、誰もが避けたものだった。



「親を、売る覚悟はある?」