「……ワリ……なんて言えばいいか、分かんね。……何泣いてんだ、お前」
涙を流しながら顔を覗き込むチカに祠稀は眉を寄せながらも、チカのフードを引っ張って笑った。
ほっとして、あたしまで泣きそうになる。
「……で、俺って今どういう状況?」
祠稀は乱暴にチカの涙を拭うと、立ち竦むあたしに尋ねてきた。
聞きたいことは分かるけれど……ためらってもしょうがない。
今さら後悔したって、本当に今さらだ。
「殺人未遂とか、そういうことにはなってないよ。あの後すぐに救急車呼んで、呆然としてたお父さんも無理やり救急車乗せて、祠稀は頭4針。昨日の話ね」
チカが一度鼻を啜って、あたしは続きを話し出す。とても簡単に、簡潔に。
「お父さんが、お母さん連れて、消えた」
「……は?」
「……ごめん。あたしが、キレたから。脅したの。警察に突き出してやるって」
どんなことを言って脅したかなんて、祠稀にはだいたい想像がつくだろう。
怒られるかと思ったのに、祠稀は上半身を起こして「……そ」とだけ言った。
口調はしっかりとしてるけど、起き上がっても大丈夫なのかな。
心配はしても、祠稀が今何を考えてるのか分からなくて、口に出せない。



