僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「私がしたことは教育だ!」

「へぇ、じゃあ奥さんは? SMプレイですなんて通じないからね。……腐れ外道が」

「……凪……」


怒りを露わにする凪におじさんは口を噤んだ。


あたしはできれば、全部認めて謝ってくれればいいと思っていたけど、凪はそうじゃないんだろう。


ほっといたら、今にもおじさんを殴りそうだ。


「……父さん。もう、無理ですよ。全部全部、自分の思い通りになるなんて、ありえないんです。……僕も、父さんも罪を認めなきゃ。許してくれなくても、祠稀に謝らないと……何度だって、謝らなきゃいけないんです」


黙ってしまったおじさんに枢稀さんが口を開き、小さくも大きくもない、落ち着いた声で話す。


見ると、涙ぐんでるように見えたけれど、あたしはすぐおじさんへ視線を戻した。


「祠稀は、父さんを殺そうとしたかもしれないけど……僕たちはそれだけのことを、祠稀にしてきたんです。そうなるまで追い詰めたのは誰なのか、分かるでしょう……っ」


俯き続けるおじさんに、枢稀さんは涙声で告げた。


今度こそ届くと信じて。顔を上げたおじさんが、罪を認めてくれると信じて。


「……分かった」

「!」


枢稀さんを見て言った言葉は、あたしと凪にも確かに聞こえた。


おじさんはあたしと凪のことも見ると、ゆっくりと腰を上げる。


威圧感も、不気味な笑顔も、焦りの表情も見当たらない。ただ背筋を伸ばして立ち上がったおじさんを、あたしも凪も枢稀さんも、疑うように見つめた。