「私がしたことは教育だ!」
「へぇ、じゃあ奥さんは? SMプレイですなんて通じないからね。……腐れ外道が」
「……凪……」
怒りを露わにする凪におじさんは口を噤んだ。
あたしはできれば、全部認めて謝ってくれればいいと思っていたけど、凪はそうじゃないんだろう。
ほっといたら、今にもおじさんを殴りそうだ。
「……父さん。もう、無理ですよ。全部全部、自分の思い通りになるなんて、ありえないんです。……僕も、父さんも罪を認めなきゃ。許してくれなくても、祠稀に謝らないと……何度だって、謝らなきゃいけないんです」
黙ってしまったおじさんに枢稀さんが口を開き、小さくも大きくもない、落ち着いた声で話す。
見ると、涙ぐんでるように見えたけれど、あたしはすぐおじさんへ視線を戻した。
「祠稀は、父さんを殺そうとしたかもしれないけど……僕たちはそれだけのことを、祠稀にしてきたんです。そうなるまで追い詰めたのは誰なのか、分かるでしょう……っ」
俯き続けるおじさんに、枢稀さんは涙声で告げた。
今度こそ届くと信じて。顔を上げたおじさんが、罪を認めてくれると信じて。
「……分かった」
「!」
枢稀さんを見て言った言葉は、あたしと凪にも確かに聞こえた。
おじさんはあたしと凪のことも見ると、ゆっくりと腰を上げる。
威圧感も、不気味な笑顔も、焦りの表情も見当たらない。ただ背筋を伸ばして立ち上がったおじさんを、あたしも凪も枢稀さんも、疑うように見つめた。



