僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「おじさん、なんか勘違いしてない?」

「……」


枢稀さんもあたしも固まってしまった中で、唯一平然としておじさんと向かい合ってるのは凪だった。


そんな凪を不愉快そうに見上げるおじさんは、何がと言いたげだ。


「祠稀を少年院に? ……それで、その後は? 枢稀さんの話聞いてなかったの?」

「何が言いたいんだ君は」


心底面倒そうなおじさんを、凪は鼻で笑ってみせる。最後に笑うのは、あなたじゃないと言うように。


「知ってますよ? 奥さんにも暴力振るってること。それから未だに裏カジノに出入りしてることとか、天野さんの闇金手伝ってることとか?」

「……裏カジノ? ……闇金って、ちょっと父さんっ! 天野さんってまさか……」


事実を知らなかったのであろう枢稀さんが愕然とする。おじさんの顔は真っ青になって、あたしはまさか調べたのだろうかと思った。


この短時間で可能なのかと考えながら、凪の綺麗な微笑みが崩れる。


「言ってる意味分かる? 枢稀さんが言った通りにしてって言ってんの。そうでなきゃ、あたしがおじさんを警察に突き出してやるから」

「……っ貴様にはなんの関係もないだろう!」

「関係あるし、その前に自分のしてきたことを反省したら?」

「うるさい! 私が反省することなど何もない!」


……激情に、駆られやすい人なのだろうか。先ほどまでとは別人のように、おじさんは冷静さを失っていた。


凪と対峙するおじさんが、自分の思い通りにならず駄々をこねてる子供に見えてくる。