「おじさん、なんか勘違いしてない?」
「……」
枢稀さんもあたしも固まってしまった中で、唯一平然としておじさんと向かい合ってるのは凪だった。
そんな凪を不愉快そうに見上げるおじさんは、何がと言いたげだ。
「祠稀を少年院に? ……それで、その後は? 枢稀さんの話聞いてなかったの?」
「何が言いたいんだ君は」
心底面倒そうなおじさんを、凪は鼻で笑ってみせる。最後に笑うのは、あなたじゃないと言うように。
「知ってますよ? 奥さんにも暴力振るってること。それから未だに裏カジノに出入りしてることとか、天野さんの闇金手伝ってることとか?」
「……裏カジノ? ……闇金って、ちょっと父さんっ! 天野さんってまさか……」
事実を知らなかったのであろう枢稀さんが愕然とする。おじさんの顔は真っ青になって、あたしはまさか調べたのだろうかと思った。
この短時間で可能なのかと考えながら、凪の綺麗な微笑みが崩れる。
「言ってる意味分かる? 枢稀さんが言った通りにしてって言ってんの。そうでなきゃ、あたしがおじさんを警察に突き出してやるから」
「……っ貴様にはなんの関係もないだろう!」
「関係あるし、その前に自分のしてきたことを反省したら?」
「うるさい! 私が反省することなど何もない!」
……激情に、駆られやすい人なのだろうか。先ほどまでとは別人のように、おじさんは冷静さを失っていた。
凪と対峙するおじさんが、自分の思い通りにならず駄々をこねてる子供に見えてくる。



