「……彼女たちは、祠稀と同居してる子ですよ。もうひとり彗くんって男の子と、4人で暮らしてるんです」
とても小さな、病院が静寂でなければ聞き取れないほどの声で、枢稀さんは話し出す。
何が言いたいのか分かるのは、この場ではあたしだけで。凪とおじさんは、眉を寄せていた。
「なんだいきなり。……お前がコソコソと何か調べていたのは知っていたが、アイツのことなんか知ってどうするんだ。あんな、生きてても意味の無……」
「知ってるんですよ!」
枢稀さんの大声におじさんは目を見開いて、凪は苦しそうに胸元の服を握る枢稀さんを見つめている。
思わず駆け寄ってあげたくなるほど苦い顔をする枢稀さんから、あたしは無意識に目を逸らしてしまった。
「父さんと……僕が、祠稀にしていたこと。彼女たちは知ってます。2年前のことも、ヒカリさんのことも。母さんが手術をしない理由も、全部」
静寂が、針のように体に突き刺さる。
張り詰める空気が枷のように首を絞めても、枢稀さんは息を吸い込んだ。
「……もう、やめましょうよ」
――私たちが警察に言うか、自ら父親を説得するか。彗が出した二択。
枢稀さんが選んだのは、自ら説得する道だった。



