僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……母さんもここに入院してるんだ」

「そう、なんですか……」


あたしたちの前で立ち止まり、疲れた笑顔を見せる枢稀さん。彗は何か言いたげだったけれど歩き出し、あたしと枢稀さんもそれに続いた。


……彗は、逃げるなって言いたかったんだと思う。でも枢稀さんはもう逃げることはできないと理解しているから、彗は敢えて呑み込んだんだろう。


逃げるつもりはなくても、やっぱり怖さはあるんだろうと分かっているから。



「日向祠稀さん……あ、先ほど運ばれてきた方ですね。今治療室にいますので、あちらから……」


受付に行くと看護師が祠稀の居場所を教えてくれた。向かおうとすると、彗が「あ」と声を漏らす。見ると、携帯を取り出していた。


「ごめん、先に行ってて。チカだ」


あたしが頷くと、彗は小走りに病院の外へ向かう。


「……じゃあ、行きましょうか」


あたしは少し顔色の悪い枢稀さんに声をかけ、きっと凪もいるであろう場所へと向かった。薄暗い廊下を歩いていると、なんだかあたしまで滅入ってしまう。


「……あ、そこ、左ですね」


ぼんやりとした明かりが薄暗い廊下に差し込んでいる。徐々に治療室に近付くにつれ、話声が聞こえてきた。


凪かな?と思いながら左を曲ろうとした時。


「アンタそれでも親なの!?」


凪の怒声が聞こえた。