「……じゃあ、チカには伝わるね。大雅先輩と遊志先輩はどうするって?」
祠稀が搬送された病院にタクシーで向かいながら、隣に座る彗にふたりは帰ると伝えた。
「大人数で押しかけるのも悪いからって。探すのに協力しただけで、文句はまた別の日にするって言ってたよ」
「……文句?」
「あ、えっとね……なんか大雅先輩、祠稀に言いたいことがあるみたいで」
「……ふーん?」
彗はさして興味はないようで、助手席に座る枢稀さんを見つめてから、後ろに流れる景色を眺め始める。
あたしも同じように窓の外を見て、どうか早く祠稀の目が覚めることを願った。
「僕が払うから」
病院に着くと、運転手が金額を言う前に枢稀さんが財布を取り出した。あたしと彗は顔を見合わせてから、お礼を言ってタクシーを降りる。
「祠稀、どこだろう……」
「受付に聞けばすぐ分かるよ」
彗と正面玄関に向かいながら、車のエンジン音が遠ざかるのが分かり、振り向くと枢稀さんが病院全体を見上げていた。
「……枢稀さん」
あたしが呟くと彗も足を止めて振り返り、枢稀さんはそんなあたしたちに気付き、歩き出す。



