「凪、俺と別れたあとに祠稀のこと見つけて、お母さんの病院に連れてったんだって。それでお母さんの手術しない理由が、父親が諦めろって言ったからなのが分かって、祠稀が怒って家に行ったらしいよ」
彗は自分の携帯を取り出し、枢稀さんにも視線を送りながら話し続ける。
「……父親を、殺そうとしてたみたいですよ」
「!」
「でも、寸でのところで凪が来て、気を取られた祠稀は父親に突き飛ばされて、シューズラックの角に頭を強打。……血がいっぱい出て、意識不明の状態」
なんとも言えない表情を見せた枢稀さんは俯き、体の横で拳を握っていた。
「……タクシー拾ってくるから、ちょっと待ってて」
通りすがりに彗が頭を撫でてくれて、少しだけ落ち着いた。
あたしは小さく深呼吸をして、大雅先輩に電話をかける。
威光のメンバーと一緒にいるだろうから、大雅先輩に伝えれば、チカという子にも伝わるはずだ。



