僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……今、“しない”って言ったか?」


“できない”んじゃなくて、しないのか?


母さんは微笑む。何もかも受け入れたように、自分の罪を、清算するかのように。


「……親父か」


低く重く絞り出すように呟くと、湧き上がる、怒り。


でも荒々しい怒りはすぐに静まり、俺は凪に視線を向ける。明らかに困惑した表情の凪に少し笑って、口を開く。


「なぁ、凪。お前はさ、性格も伝えようとする言葉も、ヒカリとよく似てる」

「……なに、いきなり……っ待って祠稀!」


1歩も動いてないのに、凪は焦ったように俺の腕を掴んでくる。


俺が言おうとしてることが分かったのか、それとも感覚的にまずいと察知したのか。


どちらにしてもさすが凪だと思うけど、俺はただ微笑んだ。母さんと、同じように。


「お前なら、チカたちを救えるよ」


目を見開く凪に、俺は眉を下げた。胸の奥では沸々と煮えたぎる怒りが、静かに静かに、憎しみを呼び起こす。


「ワリィ。せっかく母さんのところに連れて来てくれたのに」


グッと、爪が食い込むほど腕を掴んでくる凪の肩に手を置く。


「ダメ、ダメだよ祠稀! どこに行く気なのっ!」

「……俺はけっきょく、憎むことはやめられない」

「しっ……!」


凪の左肩を強く押して、よろけた凪の背中を思い切り突き飛ばした。


母さんのベッドに倒れた凪を見てから、一目散に走り出す。


「祠稀!!」


凪の声が聞こえたけれど、止まることなく走り続けた。