僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……祠稀……ねぇ、祠稀。学校は楽しい? お友達はたくさんできた?」


涙ぐむ俺が目を合わせると、母さんは綺麗な顔で微笑んでいた。ゆっくり、ゆっくり、頬に涙を伝わせながら。


「同居、してるんでしょう? 凪ちゃんと、彗くんと、有須ちゃん? 枢稀がね、教えてくれたの。どんな子かなって、祠稀は今、幸せかしらって、毎日考えてる」

「……やめろよ」

「あの家を出てくれてよかった……守ることも、逃がすことも、逃げなさいって言うことも、できなかったから……」

「……黙れって……」

「もう苦しい思いも痛い思いも、しなくて済むんだって。やっと祠稀は、ふつうに生活できるんだって。……よかった、祠稀。元気そうで、」

「なんで手術しねぇんだよ!」


ぼろっと涙が落ちた。それでも母さんは涙を流しながら微笑んでいた。


俺のせいではないと、俺の幸せを願ってるんだと、言葉にされなくても伝わってくる。


「自分の体の心配しろよ……」


枢稀のように、母さんのことも見捨てた俺のことなんか憎んでくれればよかったのに。そしたら俺も、憎んでいられたのに。


「……手術はしないの」

「……」

「だから、逢えてよかった。逢いに来てくれてありがとう、祠稀」


手術しないと危ないと、凪が言っていた。


……なんで。そんな大金がかかる手術なのか? そんなに、重い病気……。