僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



クローゼットを開ければ、1週間分の服が下に畳み重ねてあったから。


たまに、服の上に金と、邪魔にならない程度の食糧が纏めてあった。それをカバンの服と取り換えれば、数秒で部屋を出ることは造作もなかったんだ。


親父にバレたら何をされるか分からないのに、母さんはずっと続けていた。ヒカリが死ぬまで、ずっと。


「……ごめんね、本当に。守ってあげなくて……祠稀が守ってくれてるの、分かってたのに……何もできなくて……っ」


じわりと視界がぼやける。


守っていたことがバレていたのかと。でも今さらそんなことはどうでもいいんだと思うのと同時に、ヒカリを返せとも思う。


やり場のない憎しみも後悔も罪悪感も、俺にはうまく伝えることができない。


「守ってなんかねぇよ……俺はけっきょく、母さんも枢稀も捨てたんだ」


だから、逢えないと思った。


病室の前で、後悔と罪悪感が一気に襲って、身動きが取れなかった。


俺が家から出たらどうなるかぐらい分かっていたのに。むしろ、母さんも枢稀も、俺と同じ目に合えばいいとさえ思っていたんだから。


それなのに、どんな顔して逢えばいいんだ。


絶対に服の下に痣のある母さんに、どんな顔をして……。