「……初めまして。祠稀と一緒に住んでる、夢虹凪です。……本当に似てますね、祠稀と」
「あ……あの……初めま……、し……祠稀……なの?」
震える声に顔を上げると、上半身を起こした母さんと目が合った。
痩せていると思って、母さんの腕から伸びるチューブがやけに痛々しくて。
その全ての原因を親父に結び付ける俺は、どうかしてる。
「……久しぶり」
ぽつりと呟くと、母さんも同じように返してきた。会話がないのは分かっていた。続かないことも。
だったらどうして俺はここにいるんだよ。
入院してると聞いて、手術しないと危ないと聞いて、ただひと目見れればよかったのに。
そもそも、逢いに来たからといって、どうにかなるわけじゃないのに。
それでも凪は、俺を母さんに逢わせたかったんだろう。愛された記憶があるのなら、復讐なんて、やめてほしくて。
「……あん時は、どーも、な」
突然の俺の言葉に母さんは驚いて、凪も同じようにしていた。母さんはなんのことだか分かったのか、小さく首を振る。
「ごめんね、祠稀……あんなことしか、できなくて……」
「……いいって。助かったんだ、ほんとに」
俺が威光に出逢ってから。服を取り換えにだけ家に帰って、すぐに部屋から出て、鳥の籠にされずに済んだのは、母さんのおかげだった。



