僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……初めまして。祠稀と一緒に住んでる、夢虹凪です。……本当に似てますね、祠稀と」

「あ……あの……初めま……、し……祠稀……なの?」


震える声に顔を上げると、上半身を起こした母さんと目が合った。


痩せていると思って、母さんの腕から伸びるチューブがやけに痛々しくて。


その全ての原因を親父に結び付ける俺は、どうかしてる。


「……久しぶり」


ぽつりと呟くと、母さんも同じように返してきた。会話がないのは分かっていた。続かないことも。


だったらどうして俺はここにいるんだよ。


入院してると聞いて、手術しないと危ないと聞いて、ただひと目見れればよかったのに。


そもそも、逢いに来たからといって、どうにかなるわけじゃないのに。


それでも凪は、俺を母さんに逢わせたかったんだろう。愛された記憶があるのなら、復讐なんて、やめてほしくて。



「……あん時は、どーも、な」


突然の俺の言葉に母さんは驚いて、凪も同じようにしていた。母さんはなんのことだか分かったのか、小さく首を振る。


「ごめんね、祠稀……あんなことしか、できなくて……」

「……いいって。助かったんだ、ほんとに」


俺が威光に出逢ってから。服を取り換えにだけ家に帰って、すぐに部屋から出て、鳥の籠にされずに済んだのは、母さんのおかげだった。