僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



◆Side:祠稀



「息子がいるとは聞いていたけど、本当にそっくりなんだな」


凪に手を引かれながら、ただただ歩いて、気付いたら病院の中だった。


止まった足に顔を上げると、凪と話していた医者にまじまじと見られていて、顔を逸らしてしまう。


「まあ似てる似てないはいいからさ。病室ってどこ?」

「ああ、エレベー……使……よ―――…」


声が遠のくのが分かりながら、俺は何をしてるんだろうと思った。


なんで病院に。なんで母さんに逢いに来てんだよ。


復讐をするはずだったのに。今日で全て、終わらせるはずだったのに。


……決心したのに。俺は、凪が現れた時にはもう――…


「祠稀」


手を引っ張られて顔を上げた。目が合うと、凪は少し笑みを見せて「行こう?」と声をかけてくる。


よろりと導かれるままに歩き出すと、後ろから先ほどの医者が声をかけてきた。


「祠稀くん。お母さん、いつも君の話ばっかだぞ」


ずしん、と。俺の奥底に轟く音。多くの感情が混ざった大きな塊が、胸の奥に落ちる感覚。


反応しない俺の代わりに凪だけが振り向いて、何か言うと再び俺の手を引いて歩き出す。