僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「また祠稀を身代わりにしようって言うんですか。母親が入院して、父親の暴力が自分に向かないために?」


目の前まで詰め寄った俺を、背の高い枢稀さんが見下ろしてくる。冷や汗と、震える体が、怖いと言ってる気がした。


俺じゃない。枢稀さんを縛り付ける、父親という存在が怖くて堪らないんだ。


「……なん、で……そんなこと……」

「知ってますよ。全部、全部。2年前の今日、起きたことすら」

「誰にも言うな……!!」

「……」


グシャリと前髪を掴んで、枢稀さんはブツブツと言い出す。


「言うな、誰にも……バレたら終わる……俺の今まで積み上げて来たものが、全部……アイツがいなきゃ、俺が親父に殺される……っ!」


――可哀相だと、思った。


祠稀が散々、親父の犬だ駒だと言っていたけれど、その通りだと思ったし、被害者でもあるんだろう。


だけど祠稀にしたことが許されるわけじゃない。


自分を守るだけの傍観者は、いらない。


「今さら遅いですよ。俺と有須を含めて、いろんな人が知ってる。……祠稀にばかり気を取られ過ぎですね。どうせ、祠稀は誰にも心を開かないとでも思ってたんでしょうけど」


それが間違いだ。

誰も何も知らないまま、祠稀を連れ戻せると勘違いしていたことが、間違い。